定年延長・再雇用 企業を取り巻く環境ENVIRONMENT

業種・職種ごとの定年年齢の傾向~定年再雇用か、定年延長か?~

「定年再雇用制度継続か、定年延長に踏み切るか?」検討中の会社が多い中、産業別・業種別の観点からは一定の答えが出ています。

厚生労働省が発表した、令和4年就労条件総合調査で、産業別の「一律定年制を定めている企業における定年年齢階級別企業割合」が掲載されています。

一律定年制を定めている企業における定年年齢階級別企業割合

(単位:%)

厚生労働省「令和4年就労条件総合調査」より弊社抜粋

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定年年齢を65歳以上に定めている企業の割合を産業別に見れば、多い順に

  • ① 運輸業・郵便業 37.7%
  • ② 宿泊業、飲食サービス業 33.8%
  • ③ 教育、学習支援業 30.9%
  • ④ 医療、福祉 30.2%
  • ⑤ 建設業 30.1%

が30%以上となっています。

これら産業の共通点は何でしょう?

それは、「慢性的な人手不足」に加え、「60歳以上の人材が活躍している産業」言い換えれば「60歳以上に頼らざるを得ない産業」と言えるでしょう。

運輸業においては、旅客ではバスやタクシーなどのドライバー、物流では宅配や運送トラックのドライバーは、高齢化が進んでいます。宿泊業、飲食サービス業でも、パート・アルバイト人材の割合が高い業種ですが、旅館やホテル、料亭などでは、スタッフの高齢化は顕著です。一方、外食産業大手では、すかいらーくなどは65歳定年に踏み切っていますが、若い顧客層をターゲットとした企業では、できれば社員の高齢化は避けたいため、悩ましいところです。

教育業界でも、大学などは教授になるまでに一定の年数を要するため、教員については60歳で定年というわけにはいかないでしょう。国家公務員の定年延長が決定したことで、国公立学校の教員・職員の定年も65歳が標準となっていきそうです。予備校や学習塾は比較的平均年齢も若く、60歳定年が主流かと思われますが、個人経営など小規模な事業体では、定年自体を定めていないケースも多そうです。

医療機関では、医師の高齢化が進んでおり、60歳以上の医師に活躍してもらわないと、立ち行かない病院や診療所がほとんどではないでしょうか。職員の定年を60歳に設定している医療機関も、看護師などは慢性的な人手不足のため、再雇用やパートタイムのかたちで、60歳以上の人材に頼らざるを得ないと思われます。また、福祉の分野でも、介護業界などはスタッフ高齢化のため、定年延長に前向きだと考えられます。しかし、大手介護企業では、介護以外の事業を展開しているケースも多く、グループ企業の中で介護事業だけ定年延長にするかどうかが悩みどころではないでしょうか。

建設業も、高齢化が進んでいる代表的業種です。特に、現場の職人や技術者では、その傾向が顕著です。そのため工事専業の会社などは、定年延長に前向きです。とりわけ公的資格保有者などは、60歳以上でも引く手あまたのため、再雇用制で賃金ダウンすれば、転職してしまうリスクが高いからです。ただし、大手企業では、清水建設や大和ハウス、積水ハウスなどは65歳までの定年延長を実施しているものの、必ずしも足並みが揃っているわけではありません。おそらく、企業規模が大きくなるほど、技術者といっても設計職や工学系の職種が増え、企画部門や管理部門などホワイトカラー職種の人員割合が多いためと考えられます。

以上、定年延長に積極的な産業や業種には、シニア人材の活躍が不可欠という共通点がありました。逆に、IT、広告、コンテンツビジネス、若者向けビジネスなど、20代、30代が活躍する業界では、消極的にならざるを得ないでしょう。若年層の採用が比較的可能であることに加え、組織を若く保つことが、競争力の源泉にもなるからです。

また、産業や業種という括りだけでなく、企業にとっては職種ごとにニーズが異なりそうです。たとえば、運送業では「ドライバーは定年延長したいが、事務職は定年再雇用のままにしておきたい」、建設業でも「現場の技術者や職人は定年延長にしたいが、本社部門は定年再雇用にしておきたい」といったニーズです。しかし、1つの会社で職種によって定年年齢を変えるというのは不可能に近いため、難しい判断が迫られることになります。

そのように考えると、定年再雇用制度のままで、職種や定年後の役割や貢献によって待遇を変えていくという選択肢が、有効なように思われます。定年後もつなぎとめたい人材層の待遇だけを引き上げるなど、柔軟な制度設計が行いやすいからです。

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