定年延長・再雇用 企業を取り巻く環境ENVIRONMENT

定年と同一労働同一賃金

現行の高齢法に基づく「継続雇用制度」を利用している企業のほとんどが、定年後の再雇用社員の賃金を一定割合減額しているということは周知の事実です。しかしながら再雇用者の仕事が正社員と同一労働である場合は、いわゆる「同一労働同一賃金」(大企業は2020年4月から、中小企業は2021年4月から適用)のルールに対応しておく必要があります。特に、「長澤運輸事件」の最高裁判決は、定年後の継続雇用時における賃金設計実務にも大きな影響を与えることになりました(下図)。

長澤運輸事件最高裁判決(2018年6月1日)のポイント

定年後の継続雇用に伴う賃金減額の法律適合性
<裁判の概要>
  • 横浜市の運送会社である長澤運輸で、定年後再雇用された嘱託社員のトラック運転手3人が、正社員との賃金格差の是正を訴えた裁判の最高裁判決。

<判決のポイント>
  • 定年退職後の再雇用などで、待遇に差が出ること(年収水準では79%程度)自体は不合理ではないとした。
  • 長期雇用前提の正社員と定年再雇用の嘱託社員とでは、会社の賃金体系が異なることを重視。仕事内容が変わらなくても、給与や手当の一部、賞与を支給しないのは不合理ではないと判断した。
  • ただし、皆勤者に支払われる「精勤手当」を嘱託社員に支給しないのは不合理で違法とした。

今後の判例動向によっては、再雇用者の賃金の引き上げを検討しなければならないケースも出てくることでしょう。

逆に定年延長を実施して、正社員としての処遇が継続される場合には、同一労働同一賃金への対応が不要になると考えられるため、そうした観点から定年延長に踏み切る企業が今後増えてくることも予想されます。

定年延長コンサルティングサービス