コラム/小冊子/動画COLUMN

コラム

YKK・大和証券・ポーラはなぜ定年をなくしたのか? 会社の事情から見える“年齢で区切らない働き方”

「定年」と聞くと、働き方の終点のように感じる人も多いかもしれません。
ですが、YKK、大和証券、ポーラの事例を見ると、年齢で一律に区切るより、どう働いてもらうかを軸に考える会社が増えていることがわかります。
背景にあるのは制度改革そのものより、事業の中身と、シニア人材の価値の見え方の変化です。

YKKは「公正」を貫いた

YKKが定年制をなくした理由は、まず企業理念にあります。
グループは、年齢や性別、学歴、国籍にとらわれず、役割を軸に処遇する「公正な人事」を長く重視してきました。
その考え方を突き詰めると、「一定の年齢に達したから一律で退職する」という仕組みは、理念と少しずれることになります。ですから、定年廃止は人手不足対策というより、企業としての一貫性を示す方針に近いといえます。
さらにYKKは、世界で事業を展開し、安定した収益基盤を持つ企業として、技術継承や人材育成を長期視点で設計しやすい立場にあります。
シニア社員が蓄積してきた知見を、年齢で切らずに生かす余地が大きいのも特徴です。

大和証券は顧客構造に合わせた

大和証券の営業職で定年廃止が検討・導入された背景には、顧客層の変化があります。
大和証券は、今後長期にわたって60歳以上の年齢層に金融資産が多く残ると見ており、高齢の顧客には経験豊富な営業担当の方が相性がよいと考えたのです。
証券営業は、商品知識だけでなく、長年の信頼関係が成果を左右しやすい仕事です。特に資産運用や相続、守りの相談では、若さよりも安心感や対話の積み重ねが効いてきます。
つまり大和証券の場合は、「シニアを活かす」ことがそのまま「顧客対応力を高める」ことにつながっています。
YKKが理念主導だとすれば、大和証券は事業環境に合わせた実務的な判断が色濃いといえます。

ポーラは高齢顧客との関係性

ポーラもまた、事業の性質が定年見直しを後押しした企業です。化粧品販売は、商品を売るだけでなく、肌悩みの相談や継続的な接点が価値になるため、短期で人を入れ替えるより、長く顧客と関係を築ける人材が強いのです。
とくにポーラは、長年の接客経験や地域での信頼がものを言う場面が多くあります。年齢を重ねた社員が、そのまま顧客の年代と近い距離感で寄り添えることは、営業上の強みになります。
ポーラの変更は、定年後も働けるかどうかというより、高齢のお客さまと向き合う仕事に、高齢の社員が価値を発揮しやすいという発想に近いです。

3社の共通点と違い

3社に共通するのは、定年をなくすことが単なる福利厚生ではなく、事業戦略になっている点です。
年齢を下げれば新陳代謝が進むという発想ではなく、経験の蓄積が売上や品質、顧客満足に直結する場面を重視しています。
ただし、動機は同じではありません。YKKは盤石な収益構造と企業理念に沿う形で定年廃止を進め、大和証券とポーラは、それぞれ顧客の高齢化と信頼関係の重視という事業上の理由が大きいです。
この違いは重要です。定年をなくす会社が増えるとしても、すべての企業が同じ理由で動くわけではなく、自社の商売にとって何が価値かで判断は変わります。

年齢で区切らない働き方

アメリカでは年齢を理由に働く機会を奪う発想が強く制限されており、日本でも「定年をどうするか」より、「年齢に関係なくどう活躍してもらうか」へ視点が移りつつあります。
ただ、重要なのは海外制度の真似ではありません。会社ごとに、シニアが強みを出せる仕事があるか、顧客との関係性を維持できるか、若手とどう役割分担するかを考えることです。
定年をなくすというのは、年齢で線を引かないことではなく、年齢に頼らず働き方を設計し直すことでもあります。YKKは理念と収益基盤、大和証券とポーラは顧客との関係性です。その違いこそが、定年廃止の本当の理由を物語っています。

定年延長コンサルティングサービス