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2026年10月施行の同一労働同一賃金ガイドライン改定で変わる、60歳以降の待遇設計

60歳以降の待遇設計は、いまや「定年後だから一律に下げる」という発想では通用しにくくなっています。2026年10月に同一労働同一賃金ガイドラインが見直されることで、定年再雇用と定年延長のいずれを採る企業でも、賃金や手当、退職金の考え方を改めて点検する必要が出てきます。

人事担当者にとっては、制度を整えること自体よりも、「その差をどう説明するか」がより重いテーマになります。

同一労働同一賃金ガイドライン改定の背景

今回の改定が注目される背景には、これまでの運用で、60歳前後の処遇が会社ごとにかなりばらついていたという事情があります。同じような仕事を続けていても、定年を境に賃金が大きく下がるケースは少なくありませんでした。

一方で、社員側から見ると、仕事内容はほとんど変わっていないのに、年齢だけを理由に手当が外れたり、退職金の考え方が曖昧なまま処遇が決まったりすることに不満が残りやすい状況がありました。今回の見直しは、そうした実務上のズレを、より整理しようとする流れの中にあります。

2026年改定で明確になった待遇差の考え方

特に大きいのは、退職手当、家族手当、住宅手当、無事故手当、福利厚生施設、病気休職、夏季冬季休暇、褒賞といった項目について、待遇差の考え方が一段と具体的になったことです。

つまり、これまでのように「再雇用だから対象外」「定年延長だから維持」と単純に分けるのではなく、手当ごとに支給目的を確認し、どの差なら合理的と言えるのかを見直す必要があります。

60歳以降の賃金設計は、年齢区分ではなく、職務内容や勤務実態を基準に組み立てる方向へ、さらに重心が移っていると考えるべきです。

定年延長と定年再雇用の違い

定年延長は雇用を切らずにそのまま続ける制度なので、社員としての連続性が保たれやすい反面、年齢を理由に処遇を動かしにくい面があります。

これに対して定年再雇用は、一度区切ったうえで契約を結び直すため、職務限定や勤務日数の調整はしやすいものの、待遇差の説明責任が強く求められます。

どちらが有利という話ではなく、どちらを選んでも、処遇の設計を雑にすると社内外の説明が難しくなる、というのが実務上のポイントです。

定年後再雇用の賃金設計で注意すべき点

たとえば、60歳を機に定年前の7割程度まで賃金を下げる企業は珍しくありません。ただし、その際に仕事内容や責任の重さがほとんど変わらないのであれば、「なぜその水準なのか」を説明できなければなりません。

逆に、再雇用後は担当業務を限定し、出張や管理責任を外し、勤務日数も週5日から週3日程度へ減らすのであれば、賃金水準が下がる理由としては整理しやすくなります。重要なのは、金額そのものではなく、その金額に至るまでの設計の筋道です。

60歳以降の手当見直しポイント

手当の見直しは、60歳以降の制度設計の中でも特に注意が必要です。業務手当や無事故手当のように、業務との結びつきが強いものは、定年後だからという理由だけで切ると、かえって不合理と見られるおそれがあります。

家族手当や住宅手当なども同様で、生活補助の性格が強い場合には、再雇用者であっても支給の有無を慎重に考えなければなりません。

一方で、通勤手当や勤務日数に応じて変動する手当は、勤務形態の違いを踏まえて調整しやすい項目です。手当ごとの性格を分けずに一括で削ると、制度全体の納得感が崩れやすくなります。

賞与支給の見直しポイント

賞与は、60歳以降の待遇設計で見落とされやすい一方、定年再雇用者に対しては、支給の有無が最も大きな論点です。定年再雇用後だけ大幅に低いケースや、不支給とする場合は、業績連動か職務対価かなど支給趣旨を明確にし、説明可能な基準を設ける必要があります。

定年延長でも、年齢だけを理由に機械的に外す運用は避けるべきです。

人事が最初に行うべき実務対応

人事として最初にやるべきことは、60歳前後の社員について、職務内容、等級、労働時間、手当、賞与、退職金、福利厚生を一度一覧化することです。

そのうえで、定年前の正社員、定年再雇用者、定年延長後の社員、60歳以上の非正規社員を横に並べ、どの項目に差があり、その差が何のためにあるのかを言葉にしておく必要があります。制度は、作ることよりも、説明できることのほうがはるかに重要です。

60歳以降の待遇設計を経営課題として考える

60歳以降の待遇設計は、コストを抑えるための調整ではなく、高齢者雇用を安定させるための経営課題として捉えるべきです。年齢で処遇を区切るのではなく、役割、責任、勤務実態に応じた制度へ組み替えることで、採用、定着、労使関係のいずれにもプラスに働きます。

定年再雇用と定年延長のどちらを採るにしても、いま求められているのは「下げるか維持するか」ではなく、「どういう理屈で設計するか」です。そこを押さえた制度であれば、改定後のガイドラインにも対応しやすくなります。

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